こんにちは。キャリアコンサルタントの田中 由紀です。「もう、5社も経験してしまった・・・」「面接で転職回数の多さを指摘されるのが怖い」そんな風に、ご自身の経歴を、まるで『傷』のように感じてはいませんか。
転職回数が多いことは『ジョブホッパー』というネガティブな言葉で語られがちです。しかし、キャリアのプロとして私は断言します。その多様な経験は見せ方一つで他の誰にも真似できないあなただけの『強み』に生まれ変わるのです。
この記事では、なぜ企業が転職回数を気にするのかその本音を解き明かし、あなたの経歴を魅力的な『キャリアストーリー』として再構築するための、具体的な思考法と実践テクニックを解説します。
結論:問われているのは『回数』ではなくキャリアの『一貫性』
まず、あなたに知っておいてほしい最も重要なこと。それは、採用担当者が問題視しているのは転職した『回数』そのものではないということです。彼らが本当に懸念しているのは「この人は、一貫性のないキャリアを歩んでいるのではないか」「採用してもまたすぐに辞めてしまうのではないか」というあなたのキャリアに対する『姿勢』なのです。
裏を返せば、あなたのこれまでの転職の一つひとつにあなたなりの『一貫した軸』や『成長の物語』を見つけ出し、それを論理的に語ることができれば、転職回数の多さは全く問題にならなくなります。
あなたの経歴を「強み」に変える3つのストーリー戦略
では、どうすればバラバラに見える経歴に「一貫性」という名の背骨を通せるのでしょうか。以下の3つの戦略から、あなたに合ったものを見つけてください。

戦略1:『専門性深化』のストーリー
これは、異なる会社を渡り歩きながら一貫して同じ『専門分野』のスキルを深めてきたと語る方法です。例えば「A社では営業の基礎を、B社ではマーケティングの知識を、C社ではデータ分析のスキルを学びました。これら全ては、〇〇という分野のプロフェッショナルになるための計画的なステップでした」と語るのです。
戦略2:『課題解決』のストーリー
これは、異なる業界や職種を経験しながらも一貫して同じ『種類の課題』を解決してきたと語る方法です。例えば「私は、A社では営業として、B社では企画職として常に『非効率な業務フローを改善する』という課題に取り組んできました。その経験で培った課題発見力と実行力は、御社でも必ず活かせます」と語るのです。
戦略3:『多様な適応力』のストーリー
これは、一見バラバラに見える経験そのものを「強み」として語る方法です。「私は、大手企業、ベンチャー企業、そして〇〇業界と多様な文化やビジネスモデルを持つ環境を経験してきました。この経験で培った『どんな環境にも迅速に適応し、成果を出す力』こそが、私の最大の強みです」と語るのです。
【実践編】職務経歴書と面接での具体的な伝え方
構築したストーリーを、実際の選考でどう表現すればいいのか。その具体的な方法を解説します。
職務経歴書:『職務要約』で物語のあらすじを語る
職務経歴書の冒頭にある「職務要約」欄が勝負の分かれ目です。ここに、あなたのキャリアストーリーの『あらすじ』を200字程度で凝縮して書き記してください。採用担当者は、ここであなたのキャリアの一貫性を理解し、初めて、その先の詳細な経歴をじっくりと読む気になります。
面接:「なぜ、転職回数が多いのですか?」への完璧な回答
面接で、この質問は必ず来ます。これは、あなたを責めているのではなくあなたの『物語』を聞かせてほしいというサインです。決して動揺せず、チャンスだと捉えましょう。
NGな回答
「はい、自分でもそこは反省しておりまして・・・。人間関係が合わなかったり、待遇に不満があったりして長続きしませんでした。」
OKな回答
「はい。一見すると、転職回数が多く見えるかもしれません。しかし、私の中では一貫した目的がありました。それは、〇〇という分野の専門家になるためです。A社では〇〇を、B社では△△を学び・・・(戦略1のストーリーを語る)。これまでの全ての経験が、御社で貢献するための計画的なステップだったと私は考えております。」
あなたのキャリアはあなただけの傑作
転職回数が多いことは、決してあなたのキャリアの欠点ではありません。それは、あなたがそれだけ多くの挑戦をし多くの学びを得てきたという証です。
大切なのは、その点と点をあなた自身の言葉で一本の美しい線として結び直してあげること。あなたのキャリアは、誰にも真似できないあなただけの傑作なのです。どうか自信を持ってその物語を語ってください。
転職回数に関するよくある質問(Q&A)
業界も職種もバラバラで、本当に一貫性が見つけられません。どうすればいいですか?
その場合は、この記事で紹介した『戦略3:多様な適応力のストーリー』が、あなたの強力な武器になります。職務要約で「私は、〇〇業界の営業、△△業界の企画という異なる環境を経験してきました。これにより、どんな環境にも迅速に適応し、新しい知識をキャッチアップする力を培いました」と語るのです。一見、弱みに見える『一貫性のなさ』そのものを『環境適応能力の高さ』という強みに転換しましょう。
具体的に転職が何回以上だと「多い」と判断されるのでしょうか?
明確な基準はありませんが、一般的には「30歳までに3回以上」などと言われることがあります。しかし、より重要なのは『在籍期間』です。1年未満の短期離職が続いている場合は、その理由をより丁寧に説明する必要があります。逆に、一つの会社で3年以上経験を積んだ上での転職であれば、回数が多くても計画的なキャリアアップとして評価されやすい傾向にあります。
前の会社を、ネガティブな理由で辞めている場合はストーリーを作るのが難しいです。
そのお気持ち、よく分かります。大切なのは、ネガティブな事実を「学び」に転換することです。例えば「人間関係が理由で退職した」のであれば「その経験から、心理的安全性の高いチームで働くことの重要性を痛感し、自らも建設的なコミュニケーションを心がけるようになった」と語る。どんな経験も、あなたの成長の糧になっているはずです。その『学び』の視点からあなたの物語を再構築してみてください。


キャリアカウンセリングの現場で、最も多いご相談の一つが「転職回数の多さ」に関する悩みです。この記事は、あなたが自身のキャリアを胸を張って語れるようになるための私からの処方箋です。