転職がうまくいかないのはなぜ?キャリアのプロが教えるあなたが無意識に陥る「3つの思考の罠」

こんにちは。キャリアコンサルタントの田中由紀です。「書類選考が、なぜか通らない」「面接で、うまく自分を表現できない」転職活動が長引くと、まるで自分自身を全否定されているような気持ちになり、どんどん自信を失っていきますよね。

スキルや経験が足りないからでしょうか?いいえ、私がこれまで多くのご相談に乗ってきた中で感じるのは、多くの場合、原因はそこではない、ということです。むしろ、あなた自身が気づいていない、無意識の『思考の罠』に陥ってしまっているケースが非常に多いのです。

この記事では、あなたの転職活動を停滞させてしまう、代表的な3つの思考の罠とその具体的な抜け出し方を、キャリア理論の視点から優しく解説します。この記事を読めば、あなたの心は少しだけ軽くなり、明日から何をすべきかが、きっと見えてくるはずです。

罠その1:「完璧な一社」を探してしまう『100点満点の罠』

「給与も、仕事内容も、人間関係も、すべてが理想的な会社でなければ意味がない」そう考えて、完璧な一社を探し求めていませんか。その気持ちは分かりますが、それは、存在しないゴールを探し続ける、終わりなき旅のようなものです。

NGな思考

すべての条件が100点満点の、たった一つの「運命の会社」を探そうとする。

OKな思考

自分にとって「これだけは譲れない」という軸を2つか3つ決め、それが80点以上なら、最高の会社だと考える。

キャリア理論では、これを『満足化原理』と言います。最高の選択(100点)を追求し続けるよりも、自分なりの満足基準(80点)を定めて選択する方が、結果的に幸福度は高くなるのです。転職は、結婚相手探しと似ています。完璧な人間がいないように、完璧な会社も存在しません。大切なのは、あなたが何を最も大切にしたいのか、その優先順位を自分自身で決めてあげることです。

罠その2:「自分の強みなんてない」と思い込む『過小評価の罠』

「私には、人に誇れるような特別なスキルも経験もない…」不採用が続くと、誰もが一度はそう感じてしまいます。しかし、キャリアコンサルタントとして断言します。キャリアを積んできたビジネスパーソンで、強みが一つもない人など、一人もいません。

あなたが見失っているのは、強みそのものではなく、『強みを言語化する視点』です。あなたにとっては当たり前にできること、例えば「頼まれた仕事を、期日までにきっちり仕上げる」こと。それは、計画性、実行力、責任感という、極めて市場価値の高いポータブルスキルなのです。あるいは、「いつもチームの潤滑油になっている」こと。それは、どんな組織でも求められる高度なコミュニケーション能力です。

強みは、あなたの中に既にあります。どうか、自分のこれまでの頑張りを、あなた自身が一番に認めてあげてください。

罠その3:「こうあるべき」に縛られる『べき思考の罠』

「30歳なら、これくらいの年収をもらっているべきだ」「リーダー経験がないと、転職では不利になるべきだ」世の中に溢れる「こうあるべき」という声に、あなた自身の心を縛り付けていませんか。

その『べき』は、本当にあなたの心の声でしょうか。それとも、世間体や、誰かと比較した上での、借り物の価値観ではないでしょうか。この罠に陥ると、あなたは常に他人軸でキャリアを判断することになり、本当の満足感を得ることはできません。

大切なのは、世の中の「平均」や「理想」ではありません。あなたという、世界にたった一人の人間が、どんな働き方、どんな生き方をしたいのか。その『自分軸』でキャリアを見つめ直す勇気です。年収が少し下がっても、心からやりたい仕事に挑戦する。それもまた、素晴らしい成功の形なのです。

あなたのキャリアはあなたのもの

転職活動は、自分自身と深く向き合う、またとない機会です。もし今、うまくいかずに苦しんでいるのなら、それはあなたが真剣に自分の人生を考えている証拠です。

思考の罠から抜け出すだけで、あなたの世界は驚くほど色鮮やかに見えてくるはずです。焦らず、あなたのペースで、あなただけの答えを見つけていきましょう。そのプロセス自体が、あなたのキャリアを豊かにする、かけがえのない財産になるのですから。

よくある質問(Q&A)

Q.
思考の罠から抜け出せません。カウンセリングなどを受けた方がいいのでしょうか?
A.
一人で考え込んでしまい、どうしても視野が狭くなってしまう時は、第三者の視点を取り入れるのが非常に有効です。転職エージェントのキャリアアドバイザーや、私のような国家資格を持つキャリアコンサルタントに相談することで、客観的なフィードバックを得られ、思考の整理が劇的に進むことがあります。一人で抱え込まず、プロを頼ることも賢明な選択肢の一つですよ。
Q.
自分の「強み」が希望する職種で本当に通用するのか不安です。
A.
素晴らしい視点ですね。それは、自分の『Can(できること)』と、企業の『Must(すべきこと)』を結びつけようとしている証拠です。その不安を解消する最善の方法は、実際にその職種で働いている人の話を聞くことです。SNSやOB/OG訪問などを通じてカジュアルな面談を申し込み、「現場では、どのようなスキルが最も重宝されますか?」と尋ねてみましょう。リアルな声を聞くことで、あなたの強みがどう活かせるか、より具体的にイメージできるようになります。
Q.
転職活動を一度お休みするのは「逃げ」になりますか?
A.
全く逃げではありません。むしろ、非常に賢明な戦略的撤退です。心が疲弊した状態で活動を続けても、良い結果は生まれません。一度立ち止まり、転職とは関係のない趣味に没頭したり、旅行に出かけたりする時間も、キャリアを長期的に考える上では非常に重要です。心と頭をリフレッシュさせれば、また新しい視点で自分を見つめ直すことができるようになりますよ。
木原 雄一

この記事の監修者

木原 雄一

編集長 / 元・東証プライム企業 管理職

監修者コメント:田中さんの指摘は、面接官としての私の経験と完全に一致します。特に『べき思考の罠』に陥っている候補者は、残念ながら面接の場ですぐに分かります。彼らの言葉は、どこか借り物で、熱意が感じられないのです。この記事は、転職のテクニック以前に、最も重要な「心の土台」を整えるための、全ての求職者の必読書と言えるでしょう。

合わせて読みたい
おすすめ記事
PAGE TOP
目次