転職エージェントの裏側、すべて話します|元管理職が明かす『良い担当者』の見抜き方と賢い使い方

こんにちは。編集長の木原です。「転職エージェントは、本当に自分の味方なのだろうか?」転職活動を始めると、多くの人が一度はそんな疑問を抱くのではないでしょうか。私自身、利用者としても、そして彼らと仕事をする企業の管理職としても、その両方の立場を経験してきました。

結論から申し上げましょう。転職エージェントは、あなたのキャリアを劇的に好転させてくれる『最高のパートナー』にもなれば、あなたの時間を無駄にする『ただの求人紹介屋』にもなり得ます。その違いはどこにあるのか。それは、あなたがエージェントの『ビジネスモデル』を理解し、彼らを主体的に『使いこなす』意識を持てるかどうかにかかっています。

この記事では、甘い言葉は一切抜きにして、転職エージェントというサービスの裏側と、あなたが最高のサポートを引き出すための、極めて実践的な方法についてお話しします。

大前提:エージェントは「あなた」ではなく「企業」から報酬を得ている

まず、絶対に知っておかなければならない事実があります。転職エージェントは、あなたからは一切お金を受け取りません。彼らの報酬は、あなたを採用した企業側から、成功報酬として支払われる仕組みです(一般的に、あなたの理論年収の30%前後)。

これは何を意味するか。彼らのビジネス上の顧客は、突き詰めれば『企業』である、ということです。もちろん、優秀なエージェントは、あなたの長期的なキャリア成功こそが、結果的に企業の成功にも繋がることを理解しています。しかし、中には自社の売上を優先し、内定が出やすい企業ばかりを勧めてくる担当者が存在するのも、残念ながら事実です。

「このエージェントは、本当に私のために提案してくれているのか?」常にその視点を持ち、彼らの言葉を鵜呑みにしない冷静さが、あなたには求められます。

これが『良い担当者』と『悪い担当者』の決定的違いだ

では、どうすれば信頼できるパートナーを見極められるのか。私が管理職として多くのエージェントと接してきた中で見えてきた、両者の明確な違いをお伝えします。

良い担当者の特徴

あなたの話をじっくりと聞き、キャリアの『軸』を一緒に探ってくれます。あなたの希望に合わない求人は、たとえ大手有名企業であっても「ここはあなたには合わないと思います」と正直に伝えてくれます。企業の内部事情や、そのポジションの本当の課題まで、深く理解しています。

悪い担当者の特徴

あなたの希望を聞くよりも先に、大量の求人票をメールで送りつけてきます。とにかく応募を急かし、「まずは受けてみましょう」が口癖です。企業の表面的な情報しか知らず、あなたが突っ込んだ質問をすると、答えに窮します。

【深掘り解説】なぜ、担当者によって質がこれほど違うのか?

なぜ、同じ会社のエージェントでも、これほどまでに担当者による質の差が生まれるのでしょうか。その背景には、彼らが置かれている『評価制度』があります。

多くのエージェント企業では、キャリアアドバイザーは個人として『売上目標(KPI)』を課せられています。つまり、「月に何人、担当する求職者を企業に入社させるか」という数字で評価されるのです。

この目標達成のプレッシャーが強い環境では、一部のアドバイザーは、あなたのキャリアを長期的に考える余裕を失い、「とにかく内定が出やすい企業へ押し込む」という短期的な行動に走ってしまうことがあります。これが、『悪い担当者』が生まれる構造的な原因の一つです。

一方で、『良い担当者』は、目先の数字だけを追いません。彼らは、「この人に最高の転職をしてもらえれば、将来的にその人が同僚や友人を紹介してくれるかもしれない」「企業側からも、質の高い人材を紹介してくれると、さらに信頼される」という、長期的な視点を持っています。この姿勢の違いが、あなたへのサポートの質の決定的な違いとなって表れるのです。

エージェントの真価は「非公開求人」と「交渉力」にあり

信頼できる担当者を見つけたら、彼らの価値を最大限に引き出しましょう。その真価は、主に二つの点に集約されます。

1. あなた一人では出会えない『非公開求人』

企業の重要なポジションや、新規事業の立ち上げメンバーといった求人は、競合他社に知られないよう、一般には公開されずに採用活動が行われます。優秀なエージェントは、こうした『非公開求人』を多数保有しています。これこそが、エージェントを利用する最大のメリットの一つです。

2. あなたの価値を最大化する『交渉力』

内定が出た後、あなたに代わって企業と年収や待遇の交渉を行ってくれるのも、エージェントの重要な役割です。彼らは、あなたの市場価値を客観的なデータに基づいて企業に提示し、あなた個人では難しい、有利な条件を引き出してくれるプロフェッショナルなのです。

3. 面接官には聞けない『裏情報』

もう一つ、見過ごされがちなエージェントの価値があります。それは、面接官には直接聞きづらい『裏情報』を入手できることです。例えば、「このポジションの過去の退職理由はなんですか?」「配属されるチームの、リアルな人間関係はどうですか?」といった、入社後のミスマッチを防ぐための極めて重要な情報を、あなたに代わって企業側にヒアリングしてくれます。これは、個人で転職活動をしていては、決して得られない貴重な情報です。

最高のパートナーシップを築くために

最後に、優秀なエージェントに「この人を本気で支援したい」と思わせるための、利用者側の心得をお伝えします。

それは『正直であること』と『主体性を持つこと』です。あなたの経歴や希望を正直に伝え、推薦状の進捗は迅速に報告する。そして、ただ求人を待つだけでなく、「私はこう考えているが、プロの視点からどう思うか?」と主体的に相談する。この姿勢が、エージェントとの間に強固な信頼関係を築き、最高のサポートを引き出す鍵となるのです。

転職エージェントは、魔法使いではありません。しかし、信頼できる担当者とパートナーシップを築けた時、彼らはあなたのキャリアを、あなた一人ではたどり着けない場所へと導いてくれる、最も頼もしい水先案内人になります。

高橋 美咲

この記事の監修者

高橋 美咲

キャリアアドバイザー / ライフとキャリアの専門家

監修者コメント:編集長の解説は、まさに私たちが日々現場で感じていることそのものです。特に『良い担当者』の見分け方は必見です。私たちアドバイザーも、主体的にキャリアを考え、正直に話してくださる求職者の方には、より一層「力になりたい」と感じ、保有する情報の中でも特に質の高いものを提供したくなるのです。信頼関係こそが、転職成功の鍵を握っています。

木原 雄一

編集長 / 元・東証プライム企業 管理職

はじめまして、木原 雄一です。 「今の仕事、このままでいいのかな…」かつての私も、あなたと全く同じように悩んでいました。 東証プライム企業で20年。管理職も経験し、採用する側の立場も、部下を育てる立場も経験しました。傍から見れば恵まれた環境。でも、だからこそ見えてくる「組織のリアル」と「個人の幸せ」のズレがありました。 「本当にやりたいことは、ここじゃないかもしれない」 その気持ちに蓋をするのをやめ、2025年6月末に退職。私自身が大きなキャリアチェンジを経験した当事者として、そして20年間で数多くのキャリアを見てきた先輩として、このメディアを立ち上げました。 転職は、怖くて当たり前。でも、正しい知識があれば、それは「最高の未来を選ぶための冒険」に変わります。あなたの冒険の、信頼できる地図になれたら嬉しいです。

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