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「未経験からITエンジニアを目指すなら、まずSIerへ」――そう言われる一方で、「SIerはやめとけ」という声も後を絶ちません。ネットには技術論や年収論があふれていますが、私が今日お話ししたいのは、それとは全く違う角度の話です。私は20年間、システムを『発注する側』にいました。何社ものSIerに仕事を依頼し、エンジニアたちと机を並べてきた人間として、あなたに伝えたい『本当の評価基準』があります。
結論:SIerは有力な選択肢。ただし『技術力で生き残れる』と思っているなら考え直してほしい
先に結論を言います。未経験からSIerを目指すこと自体は、私は『大いにアリ』だと考えています。大規模なシステム開発に関わり、社会の根幹を支える経験は、何物にも代えがたい財産になります。
ですが、もしあなたが「とにかく技術力を磨けば一人前のエンジニアとして評価される」と考えているなら、その認識は半分しか正しくありません。なぜなら、私たち発注側から見ると、『技術力の質は、正直どこの会社もそれほど大きくは変わらなかった』からです。
発注側が本当に見ていた『たった一つの基準』
20年間、何社ものSIerに発注してきて、断言できることがあります。私たちが技術力の高さだけで発注先を選んだことは、ほとんどありませんでした。
もちろん最低限の技術力は前提です。しかし、複数の会社から提案を受けても、技術的な中身に決定的な差を感じることは稀でした。では、何で選んでいたのか。答えはシンプルです。『この人たちと、気持ちよく仕事ができるか』――それだけでした。
正論なのに、なぜか疲れる。そんなエンジニアの話
具体的な話をしましょう。あるエンジニアは、技術的には何の問題もありませんでした。言っていることもすべて正論です。ですが、その『言い方』に、いつもどこか棘がありました。こちらが質問するたびに、まるで「そんなことも分からないのか」という空気がにじむのです。
間違ったことは言っていない。だからこちらも強く言えない。結果、私たちは打ち合わせのたびに、必要以上に気を遣い、どっと疲れていました。そして案件が一区切りついたとき、私が思ったのはこうです。「次は、別の会社にしよう」と。
技術力で発注先を切られることは、滅多にありません。しかし『一緒にいて疲れる』という理由で切られることは、現場では日常的に起きています。これは評価シートには絶対に書かれない、しかし最も重い評価基準です。
逆に『また頼みたい』と思わせたエンジニアの共通点
では、私たちが「この人にずっとお願いしたい」と感じたエンジニアは、何が違ったのか。忘れられない一人がいます。
そのエンジニアは、ITの専門知識がない私たち発注側に対しても、決して専門用語で煙に巻きませんでした。私たちが理解に詰まると、その場でさっと図を描いて、「つまり、こういうことです」と翻訳してくれるのです。
そして面白いことに――こうした丁寧なコミュニケーションができる人は、仕事そのものも例外なく丁寧でした。成果物は常にこちらの意図した通りに仕上がってくる。認識のズレによる手戻りがほとんどない。「分かりやすく説明できる」ことと「質の高い仕事をする」ことは、根っこで繋がっていたのです。
切られるエンジニア
正論を、棘のある言い方で伝える。専門用語で押し切る。相手が理解しているか気にしない。技術は高いが、一緒にいると疲れる。
選ばれるエンジニア
専門外の相手にも図解で翻訳する。相手の理解を確認しながら進める。だから手戻りがなく、成果物も意図通り。また頼みたくなる。
コミュニケーションの欠如は『個人の問題』では済まない
ここが、未経験のあなたに最も伝えたい点です。コミュニケーションの良し悪しは、あなた個人の評価で終わる話ではありません。あなたの会社の売上を、失わせる力を持っています。
先ほどの「正論だが棘のある」エンジニアの話には続きがあります。その人物に対して不満を感じていたのは、私だけではありませんでした。職場の同僚たちも、口々に同じことを言っていたのです。
そうなると、組織はどう動くか。私たちは、なんとか理由をつけて、その人物を次のプロジェクトに関わらせないようにしました。そして最終的には――その会社への発注そのものを、見送ることになったのです。たった一人のコミュニケーションのまずさが、会社全体の信頼と受注を失わせる。これが、発注側で20年見てきた現実です。
エンジニアの技術は、会社の『商品』です。しかしその商品を売り込み、信頼を勝ち取るのは、結局のところ人と人との対話です。どれだけ良い商品でも、売る人の態度が悪ければ、客は二度と来ません。これは飲食店でもSIerでも、全く同じことなのです。
木原 雄一
だから、未経験のあなたが今から鍛えるべきこと
「技術力より、まず人間性かよ」とがっかりしましたか?むしろ逆です。これはあなたにとって『最高の朗報』です。なぜなら、入社時点での技術力で先輩に勝つのは無理でも、『気持ちよく仕事ができる人』になることは、未経験のあなたでも今日から始められるからです。
難しいことではありません。発注側が見ていたのは、こんな当たり前のことでした。
- 相手が知らない言葉で、説明したつもりにならない。専門用語は『翻訳』してこそ価値がある。
- 正論を言うときこそ、言い方に細心の注意を払う。正しさと、感じの良さは両立できる。
- 分からないことを、正直に「分かりません」と言える。知ったかぶりが最も信頼を失う。
- 相手が本当は何に困っているのか、その背景まで理解しようとする。
これらは才能ではなく、意識すれば誰でも身につく『習慣』です。そしてこの習慣こそが、技術力の差がつきにくいSIerの世界で、あなたを頭一つ抜けた存在にしてくれます。
未経験者の武器は、最新技術の知識ではありません。『この人と働きたい』と思わせる誠実さです。それは、これまでのあなたの社会人経験や人柄が、そのまま活きる領域なのです。
それでもSIerはキャリアの出発点として優秀である
厳しい話が続きましたが、私が発注側として多くのSIerを見てきたからこそ言えることがあります。SIerは、ビジネスパーソンとしての基礎体力を鍛える場として、極めて優秀です。
顧客の曖昧な要望を整理し、形にしていくプロセス。複数の関係者を巻き込んで一つのものを作り上げるプロジェクトマネジメントの基礎。これらは、その後どんな業界に行っても通用する『一生モノのスキル』です。事業会社の社内SEへ、あるいはWeb系エンジニアへ。SIerで培った力は、必ず次のステージへの強力なパスポートになります。
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未経験からのIT転職は『伴走者』を選んで成功率を上げる
とはいえ、未経験から一人で動くのは心細いものです。特に「コミュニケーション能力が評価される」とはいっても、それを面接でどう伝えるか、どんな企業が未経験者を本当に育ててくれるのかは、プロの視点がなければ見抜けません。
そこで活用したいのが、未経験のIT転職に特化したエージェントです。中でも『ウズウズIT』は、20代・第二新卒の未経験者支援に強く、面接対策やキャリア相談を手厚くサポートしてくれます。発注側として私が「選びたい」と感じたあの『伝える力』を、プロと一緒に磨ける環境は、未経験者にとって大きなアドバンテージになるはずです。
もちろん、エージェントはあくまで道具です。最後に道を選ぶのはあなた自身。ただ、一人で迷う時間を、プロと共に進む時間に変えるだけで、後悔のない選択に近づけることは確かです。
あなたの挑戦が、最高のキャリアに繋がることを、発注側の現場を見てきた一人として、心から願っています。
未経験からのSIer転職 Q&A
文系出身で技術に自信がありません。それでもSIerでやっていけますか?
むしろ有利な面があります。この記事で繰り返しお伝えした通り、発注側が最も評価するのは『相手に分かりやすく伝える力』です。これは技術系の素養よりも、文系的なコミュニケーション能力や国語力に近いものです。技術は入社後に学べます。人と気持ちよく仕事をする力こそ、あなたの既存の強みが活きる領域です。
30代未経験からでも、本当に転職は可能でしょうか?
可能です。30代に発注側が期待するのは、若手にはない『社会人としての対話力』です。これまでの仕事で顧客や上司と折衝してきた経験は、まさにこの記事で語った『選ばれるエンジニア』の資質そのもの。その経験を、ITの現場でどう活かせるかを語れれば、年齢はハンデになりません。
入社前に資格を取っておくべきですか?
基本情報技術者試験などは学習意欲のアピールになり、取って損はありません。ただ、発注側だった私の本音を言えば、資格の有無を気にしたことはほとんどありませんでした。それよりも『この人は誠実に向き合ってくれるか』を見ていました。資格取得そのものが目的化しないよう、注意してください。


東証プライム企業で20年間、管理職として数多くのSIerに発注し、共に仕事をしてきました。今日は「発注する側」がエンジニアの何を見ていたのか、忖度なくお話しします。